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岐阜薬科大学

岐阜薬科大学薬理学研究室の岩橋咲幸(B6)、岐阜薬科大学?岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の檜井栄一教授らの研究グループは、金沢大学、一宮西病院、東京大学、国立障害者リハビリテーションセンター、長崎大学との共同研究により、アミノ酸シグナルが"体幹を正しく維持する"ために重要な役割を担っていることを発見しました。

脊椎側弯症とは、背骨が左右に弯曲し、体幹の変形を来した状態をいいます。その多くは原因不明の特発性側弯症であり、その中でも思春期特発性脊椎側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis)は最も発症頻度が高く、思春期の女の子に多く発症します。体幹の変形が進行すると自然治癒することはなく、矯正術や外科手術が必要となり、病因?病態の解明や効果的な治療法の確立が望まれています。

栄養素の一つであるアミノ酸は、タンパク質合成の材料としての受動的な働きだけではなく、シグナル伝達分子として能動的に働いています。アミノ酸シグナルの開始にはアミノ酸トランスポーター(※1)を介したアミノ酸の細胞内流入が欠かせません。L-type amino acid transporter 1(LAT1)(遺伝子名:Slc7a5)は、ロイシンやイソロイシンなどの大型中性アミノ酸を細胞内へ輸送するアミノ酸トランスポーターです。

研究グループはこれまでに、病理検体を用いた解析から、先天性側弯症患者と特発性側弯症患者の脊椎棘突起の軟骨組織において、LAT1の発現が異なることを見い出し、脊椎の恒常性維持にアミノ酸シグナルが関与する可能性を提唱していました(Demura et al., Spine Surg. Relat. Res. 2021)。

本研究では、アミノ酸トランスポーターLAT1の不活化が、軟骨組織の形態異常を引き起こして、脊椎側弯症様の症状を誘発することを発見し、アミノ酸シグナルが"脊椎の恒常性維持"に重要な役割を担っていることを明らかにしました。本成果は、特発性側弯症の病態解明や新規治療?診断法の開発に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2022年9月27日に米国学術雑誌『Journal of Cellular Physiology』に掲載されました。

本研究成果のポイント

  • 思春期特発性脊椎側弯症は、日本人の2-3%が罹患するCommon disease(※2)であり、病因?病態の解明や新たな治療?診断法の開発が望まれています。
  • アミノ酸トランスポーターLAT1の働きを抑えると、軟骨組織の恒常性が破綻し、脊椎側弯症様の症状を呈することが分かりました。
  • LAT1は、General Amino Acid Control(GAAC)経路(※3)を介して、軟骨組織の恒常性を維持していることが分かりました。
  • 以上の成果により、LAT1-GAAC経路が、脊椎側弯症に対する新しい治療標的となることが期待されます。

研究成果の概要

研究グループはこれまでに、破骨細胞のLAT1が骨組織の恒常性維持に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきました(Ozaki K., et al., Sci. Signal. 2019)。さらに、脊椎側弯症の病態によりLAT1発現が異なることも見出してきました(Demura et al., Spine Surg. Relat. Res. 2021)。

研究グループはまず、骨格形成や軟骨組織の恒常性におけるLAT1の機能的役割を明らかにするために、軟骨細胞特異的にLAT1を欠損させたマウス(以下、LAT1欠損マウス)を作製しました。作製したマウスの表現型を詳細に解析したところ、胎生期の骨格には異常は認められなかったものの、生後4週目以降に脊椎側弯症様の症状を呈することがわかりました(図1)。

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図1:脊椎のμCT画像:LAT1欠損マウスでは、胸椎の側弯が観察される。

次に、"なぜLAT1の不活化により脊椎側弯症様の症状を呈するのか?"を明らかにするために、脊椎の組織学的な解析を行いました。その結果、LAT1欠損マウスでは、軟骨成長板において、軟骨細胞の形態異常カラム配列の乱れが観察されました(図2)。さらに、増殖?前肥大化軟骨細胞層の細胞増殖の低下や肥大化軟骨細胞層の細胞死の亢進も観察されました。

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図2:脊椎の組織学的解析:LAT1欠損マウスでは、軟骨層の形態異常やカラム配列の乱れが観察される。

次に、"生後のどのタイミングのLAT1が重要なのか?"を明らかにするため、時期特異的なLAT1欠損マウスを作製し、表現型を解析しました。その結果、4週齢以降にLAT1を欠損させた場合、脊椎に異常は観察されませんでした。つまり、軟骨細胞のLAT1は、生後から思春期の間の限定した期間に、脊椎の恒常性維持に重要であることが分かりました。

最後に、"LAT1がどのようなメカニズムで脊椎の恒常性を制御しているのか?"を検討しました。タンパク質発現解析から、LAT1欠損軟骨組織では、GAAC経路が活性化していることが分かりました。そこで、LAT1欠損マウスにAtf4ヘテロ欠損を導入すると(GAAC経路を不活化したマウス=レスキューマウスを作製すると)、LAT1欠損マウスで認められる脊椎側弯症様の症状が著明に減弱されることが分かりました(図3)。

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図3:脊椎のμCT画像:レスキューマウスでは、LAT1欠損による胸椎の側弯は抑制される。

本研究成果より、軟骨細胞のLAT1は、GAAC経路を介して細胞増殖や細胞死を調節することで、脊椎の恒常性を維持しており、"体幹を正しく維持する"ために重要な役割を担っていることが明らかになりました。(図4)。

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図4:本研究成果のまとめ:アミノ酸シグナル異常により、脊椎の恒常性が破綻し、脊椎側弯症様の症状が誘発される。

研究成果の意義?今後の展開

本研究成果は、「"正しい姿勢を保つ"ためにアミノ酸シグナルが重要」という新しい概念を提供します。また、軟骨組織の恒常性維持の破綻によって引き起こされるさまざまな運動器疾患や骨系統疾患に対する新しい知見と解決法を提供し、アンメットメディカルニーズ(※4)の解消にも貢献することが期待されます。さらに、本研究成果を展開することで、アミノ酸トランスポーターを分子基軸とした脊椎側弯症に対する根本治療薬の開発とともに、核医学イメージングによる診断法やラジオセラノスティクス(※5)による治療法の開発にも繋がることが期待されます。

用語解説

※1 アミノ酸トランスポーター
細胞膜上に存在するタンパク質の一種。細胞内外のアミノ酸を輸送する働きを持つ。

※2 Common disease
 有病率の高い日常的によく見られる疾患。

※3 General Amino Acid Control経路
 アミノ酸の状態を感知して細胞内シグナルを調節する経路。

※4 アンメットメディカルニーズ
未だ有効な治療方法が確立されていない疾病に対する医療への要望。

※5 ラジオセラノスティクス
放射性薬剤を使った診断と治療を一体化した医療技術。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業「肋骨異常を伴う先天性側弯症の発症機序の解明」(研究開発代表者:檜井栄一)、基盤研究B(特設)「栄養環境センサーを分子基軸とした脊椎側弯症に対する発症?進行予測技術の開発」(研究代表者:檜井栄一)などの支援を受けて行ったものです。

論文情報

  • 雑誌名:Journal of Cellular Physiology
  • 論文名:Conditional inactivation of the L-type amino acid transporter LAT1 in chondrocytes models idiopathic scoliosis in mice
    (軟骨細胞のアミノ酸トランスポーターLAT1の不活化は脊椎側弯症様の症状を誘発する)
  • 著者:岩橋咲幸、呂佳俊、徳村和也、大角竜馬、平岩茉奈美、久保拓也、堀江哲寛、出村諭、川上紀明、斎藤琢、朴奎珍、深澤和也、家崎高志、鈴木紅音、冨沢茜、越智広樹、北條宏徳、大庭伸介、檜井栄一
  • DOI番号:10.1002/jcp.30883

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